OPTアメリカ留学

「アメリカで働きたい」は、こんなにも不安定な希望だったなんて。

大学卒業を目前にして、内定も決まってたのに……「OPT申請のタイミングを逃した」という、たったそれだけで、H-1Bビザの道も消え、たちまち“滞在資格のない外国人”になった友達がいた。
それが10年以上前の話。

でも、今、またその“悪夢”が現実になるかもしれない。

OPTを廃止する法案が、今、アメリカ議会で提出されてる。不景気になると、いつも最初にしわ寄せを食らうのは「移民」や「外国人労働者」である。トランプ不景気だなんて皮肉な言葉も出る今、企業は採用に慎重で、ビザサポートなんてさらに遠のいてくるかもしれない。私自身も、OPT→H-1B→グリーンカードを目指した元・留学生。あの時代を生きたからこそ、今の動きがどれだけ危ういか肌でわかる。

このブログでは、過去のリアルな経験とともに、「OPT制度の今」と「その裏で揺れる留学生の未来」について、少し真面目に、でも当事者の目線で書いてみた。

あの時、私たちは「制度に切られた」:リーマンショック後の現実

今でこそ笑って話せるけれど、あの頃は笑えなかった。卒業を控えたある日、私は知人のコネを頼って、とある大手日系企業のアメリカ(全世界に名の知れた大企業)のHRに直接話をつなげてもらった。履歴書も、推薦も、内々には通っていて、あとは今後の行く末が左右されている将来的なビザの手配だけ…という段階だった。

でも、電話越しにHR担当者が放った言葉は、今でも耳に焼き付いている。

「申し訳ありませんが、今は政府からの指導(or政治的な判断)で、H-1Bは一切サポートできません。

……。えっ?一瞬、意味が理解できなかった。

当時の私のリスニング力では、その理由の詳細を全部は聞き取れなかったけれど、「今はどれだけ優秀でも、外国人をサポートする余裕はない」というのは、痛いほど伝わってきた。

結局私は、OPTで働ける1年間だけを頼りに、ロサンゼルスの小さな日系企業に滑り込んだ。いわゆる「ブラック企業」扱いされていたところで、最低賃金ギリギリ、むしろ物価を考えたら“大特価”で、それでも、「アメリカに居て経験を積めるだけでもありがたい」と自分に言い聞かせて、必死に働いた。そしてOPTが切れるタイミングで、泣く泣く日本に帰国した。

そして、もうひとつ忘れられないのが、当時一緒に頑張っていた日本人の友人のこと。

彼はアメリカの大学を首席で卒業し、すでに現地企業から内定ももらっていた。でも、「もっと学びたい」と思った彼は、卒業直前に数クラスを追加で受講していた。その“真面目さ”が、思いもよらぬ形で裏目に出てしまった。OPT(Optional Practical Training)は卒業前に申請する必要がある。そのタイミングを正確に把握できていなかった(卒業資格とCertificate:サーティフィケート資格では全く違う!)彼は、申請期間を逃し受理されなかったのだ。すでに決まっていた内定も、ビザの見通しが立たなくなったことで取り消しに。そして彼は、OPT期間も働けないまま、ただの「滞在資格のない外国人」になってしまった。

不法滞在だったかどうかははっきり分からない(もう一度F1ビザの学生に戻っていたかも知れない)けれど、「夢が制度によって断たれた」ことだけは、事実だった。数年後、Facebookで彼がアメリカ人と結婚したと知った。きっとその過程にも、語られていない物語がたくさんあるんだと思う。

私たちはただ、「制度に切られた」だけだった。努力ではどうにもならない壁が、目の前に突如として現れた。

もしこの記事を読んでいるあなたが、今OPTやH-1Bの準備をしているなら、もしあなたのご家族が、「せっかくアメリカに送ったんだから、なんとか現地で就職してほしい」と願っているなら、私のこの話が、「そうじゃない現実もある」と知ってもらう、ひとつのきっかけになればと思う。

OPT(Optional Practical Training)からの「H-1B」専門職ビザ」を掘り下げ:

ちなみに、OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)とは、アメリカの大学や専門学校を卒業した後に、1〜3年間、現地で働くことができる制度。多くの留学生は、このOPT期間中に企業からH-1Bビザのサポートを受けて、就労ビザへとつなげていくのが一般的な流れ。

私たちの時代、2008年のH-1Bビザの年間発給枠は、学士号保持者向けに6万5,000件、さらに米国内の修士・博士課程修了者向けに2万件の追加枠が用意されていた。その前年2007年は応募が殺到し、枠に対して2〜3倍の申請があり抽選となるほどの激戦。ところが翌年、私たちが卒業しOPTからのH-1B申請に挑もうとした時には、状況が激変してしまった。

多くの企業が政府からの政治的圧力を受け、H-1B申請そのものを控えるようになり、結果として例年なら真っ先に埋まるはずのIT系ポジションでさえ空きが残るという異常事態。

「実力で勝ち取れなかった」わけじゃない。「制度上の枠がなかった」わけでもない。時代の流れという壁が目の前に立ちはだかり、あるのに、使わせてもらえなかった──。そんな理不尽の中で、多くの優秀な留学生が、アメリカでキャリアを築く夢を諦め、泣く泣く帰国していった。

私もその一人でした。

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時代はまた、同じ過ちを繰り返そうとしている。

そして今、あの頃の私や彼らと同じように、「OPT制度」を最後のチャンスだと思って踏ん張っているアメリカの留学生たちの未来が、再び揺らごうとしている。

そう、最新のアメリカ国内ニュースで、OPT制度そのものを廃止する法案が、アメリカ議会に提出された。表向きの理由は「自国民の雇用を守るため」「不法移民を減らすため」── でも、現場の声を知ってる私から言わせてもらえば、これは単なる“スケープゴート探し”(特定の人や集団を悪者として仕立て上げ、責任を追わせる行為やその対象となる人を指す)。そのツケを、また外国人留学生に押しつけようとしてるだけ。

しかも忘れちゃいけないのが、留学生って、アメリカの大学経営にとって「重要な収入源」でもあるってこと。学費は州内価格なんて関係ないし、奨学金も少ない中で、「フルプライスで払ってくれるありがたい存在」なのが現実。つまり、払わせるだけ払わせて、使えるだけ使って、その後の未来は「自己責任」でポイ。本当にそんな都合のいい話、まかり通っていいの?

2008年のリーマンショックの時、私はまさにそのポジションにいた。企業にコネを使って頼んでも、HRからの答えは、「今はH-1Bは出せません。政府の指示で…」という冷たい一言。私たちの夢も努力も、たった数分の電話で断ち切られた。あのとき、どれだけの優秀な日本人留学生たちが、不透明な制度と政治に人生を押し潰されたか。

OPT申請タイミングを逃して、内定も消えたあの彼もそう。卒業前にもっと単位を取ろうと頑張ったことで、OPT申請のリミットを越えてしまった。結果、内定は取り消され、H-1Bのチャンスも消え、ただの「滞在資格のない外国人」にされてしまった。その後、彼がアメリカ人と結婚して滞在していると知ったとき、「それでしか生き残れない世界」への怒りと悲しさが込み上げてきた。

そして今、また同じことが起ころうとしている。時代は変わっても、構造は何も変わっていない。私たち日本人は、マイノリティで声をあげづらい立場だ。でもだからこそ、今これを読んでいるあなたには、「知らなかった」じゃ済まされない現実がある。

私たちが経験した“静かな絶望”を、次の世代には絶対に味わわせたくない。

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制度に振り回されないために、今すぐできることとは?

「夢を持ってアメリカに来たのに、制度でつまずくなんて、悔しすぎる」——これは、私自身が何度も感じてきたし、これまで何人もの留学生から聞いてきた本音でもある。その「OPT制度の廃止」の可能性が議論されているという報道が出てきたのは事実。まだ決定事項ではないとはいえ、これが本当に現実になったとき、どれほどの留学生がキャリアの道を断たれることになるかと考えると、胸が締めつけられる。

でも、大事なのは「もし廃止されたらどうしよう」と不安になることじゃなくて、「今、自分に何ができるか?」を考えること。

まず、OPTの仕組みを正確に理解すること。通常のOPTは卒業後1年間働くことができる制度で、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の専攻者であれば、追加で最大2年間、合計3年の延長が認められている。ただし、この延長も条件付き。対象企業での就労や定期的な報告義務など、守るべきルールがある。このOPTの期間中に、多くの学生は企業からのサポートを受けてH-1Bビザへの切り替えを狙う。ただし、H-1Bは完全な抽選制。しかも近年では倍率が高騰し、当選しない限りはビザが下りない仕組み。企業のサポートがあっても、運に左右されるという現実がある。

さらに厄介なのが、こうした制度そのものが政治的な判断によって、あっさりと変わってしまう可能性があるということ。OPT廃止の話が浮上したのも、まさに政治的な圧力や世論の変化が影響している。「外国人に職を奪われたくない」という一部の声が制度を左右する。それがアメリカの現実だ。

だからこそ、私はこれからアメリカを目指す人、あるいはすでに留学中の人たちに強く伝えたい。制度の仕組み、ルール、そして変更の兆しに、とにかく敏感になってほしい。OPTの申請は、卒業前から逆算して計画を立てる必要がある。とは言えのんびりしていたら、法案が通ればそのOPT申請さえ出来ない可能背もある。STEM延長が可能かどうか、H-1Bにチャレンジするにはどの企業がスポンサーになりうるのか、常に情報を集めておくことが命綱になる。

留学生は、フルで単位を取らなければならないから、授業も試験も落とせない。そんな状況の中で、卒業準備も、OPTの手続きも並行して進めなきゃいけない。本当に大変で、「もう無理…」って思う気持ち、すごくよくわかる。私自身も、学内バイトを掛け持ちしながらフルタイムの学生として必死で勉強してきたから。

でもね、今は当時よりもずっと競争が厳しくなってる時代。だからこそ、余裕があるなら卒業を早めたり、基準より多めに単位を取っておいて、法案が変わる前にOPTを先に申請しておくという選択肢もある。あるいは、卒業後に起業するという道もある。大事なのは、在学中からできるだけ広い視野で準備をしておくこと。自分の「今できること」だけで判断せずに、少しでも可能性の幅を広げておく。それが、急な制度変更に飲み込まれないための一歩になる。

移民排除のような法案に、人生を振り回されるなんて悔しいじゃん。だからこそ、そんな巨大な力には絶対に負けないで、しっかり準備して、自分の道を切り開いていってほしい。

そして何よりも忘れてはいけないのが、「自分の人生を守るのは、自分しかいない」ということ。たとえ制度が変わっても、対応できる柔軟性と準備があれば、チャンスは残せる。焦らず、でも鈍感になり過ぎず。情報を味方につけて、自分のキャリアを守っていってほしい。

まとめ:

OPT廃止法案が提出された今、留学生の未来が再び揺らいでいる。過去にOPT→H-1B→就職を目指した元留学生として、あの時代の“切られた経験”と今の不安定な現実。

「夢があった。でも制度が、それを許してくれなかった。」あの時、私たちは夢を制度に切り捨てられた。10年以上…いや、もう20年近く経っても、あの時の絶望は忘れられない。
現状ではまた、同じようにOPTを頼りに明るい未来を信じている誰かが、その夢ごと切り捨てられようとしている。繰り返される時代に生き残りをかけたその“悪夢”が…。
どうか、今この瞬間に夢を追い続けている誰かが、同じ悲しみを味わいませんように。“現実”を知って、それでも前に進む力にしてほしい。この声が、誰かの気づきや行動につながれば──それだけで、報われる気がする。